「与える人」と「奪う人」──学生時代の姿勢が、人生全体をどう形作るか

「Giver」と「Taker」──人生を分ける見えない選択

アダム・グラントの著書『GIVE & TAKE』によって知られるようになった「Giver(与える人)」と「Taker(奪う人)」という分類は、単なる性格の違いではありません。それは、人生のあらゆる局面──人間関係、信頼、経済力、家庭生活にまで影響を及ぼす、深い視点なのです。

今回は、学生時代にGiverだった人とTakerだった人が、社会に出て、家庭を築き、老後を迎えるまでに、どのような分岐をたどるのかを、多角的に見ていきます。


学生時代──「便利な人」と「要領のいい人」

  • Giverは友人の相談に乗ったり、グループワークで調整役を買って出るなど、目立たずとも信頼される存在です。
  • Takerは他人の努力に便乗して成果を得ることが多く、短期的には「要領のいい人」「リーダータイプ」と見られ、人気を得ることも。

しかし、この段階で既に、「他者の視点に立てるかどうか」「他人の感情や努力に敬意を払えるかどうか」という“土壌の差”が生まれています。

表面的な人気より、「誰から信頼されていたか」が後に効いてくる。


社会人初期──Giverは「地味に信頼を積み上げる時期」

  • Takerは自己主張とアピールで目立ちやすく、昇進や注目を集めやすい。
  • Giverは目立たないが、丁寧な仕事と誠実な姿勢で、着実に信頼を積み上げていきます。

信頼は“資産”。早く使い切れば、後がない。


中堅期──「信用」と「人望」がキャリアを左右する

  • Giverは人間関係と信頼の蓄積により、チームやプロジェクトを任され、自然と協力が集まる。
  • Takerは独善的に見られやすく、協力者が離れて孤立しがち。

見えない「信用残高」が、キャリアの命運を分ける。


結婚と子育て──利他性が家庭の基盤をつくる

  • Giverは思いやりと配慮に満ち、離婚率も低く、家庭が安定しやすい。
  • Takerは自己中心的な言動が摩擦や不和を招き、離婚率や家庭崩壊リスクが高まる。

家庭は究極の「Give & Give」の関係。利己性は持ち込めない。


経済面──「短期のTaker、長期のGiver」

  • Giverは信頼により副業や紹介が生まれやすく、浪費も少なく堅実。
  • Takerはギャンブル・見栄・過剰消費に走りやすく、経済基盤が不安定になりやすい。

“稼ぐ力”より、“使わない力”と“信頼を生む力”が将来を決める。


補足:奢られ癖は「無自覚なTaker化」の兆候

「奢られるのが当然」と感じ始めたら注意。

  • 感謝より依存心が育ちやすくなる
  • 他人の厚意を“消費”している

奢られ慣れている人は、知らずに「奪う人」になっていることも。


外見・生活習慣──「他者視点」がにじみ出る

  • Giverは場にふさわしい身だしなみや清潔感に配慮できる。
  • Takerは自己主張や無頓着さが外見に表れやすく、信頼を損なう要因に。

“自分視点”で整えた外見と、“他者視点”で整えた外見は、必ず伝わる。


知性・学び──「学び続ける人」か「成果だけ追う人」か

  • Giverは他者に教えたり支援する中で、自らも知識を深めていく。
  • Takerは学びが自己利益に直結しない限り「無駄」と感じやすい。

40代以降、知的な柔軟さと成長力に差が出る。


老後──「孤立」か「感謝」か

  • Giverは地域や趣味のコミュニティで歓迎され、人とのつながりを失わず豊かなセカンドライフを送る。
  • Takerは過去の実績があっても人望がなければ、年齢とともに孤立しやすい。

最後に人が集まるのは、“何をしたか”ではなく、“どんな人だったか”。


TakerからGiverへの転換は可能か?

結論として、「変わること」は可能です。ただし、与えることを“戦略”として利用する「条件付きGiver」では、周囲に見透かされ、効果は限定的です。

重要なのは、他者への貢献と自己尊重を両立できる「Otherish Giver」になること。無理な自己犠牲ではなく、長期的に信頼を育てていく姿勢こそが、人生を豊かにします。


結びに代えて──人生は、どこからでも「Giverとして生き直せる」

学生時代、あなたはGiverだったでしょうか。それともTakerだったでしょうか。

たとえ今までTaker寄りだったとしても、今日からGiverとして生き直すことは十分に可能です。他者との関係性が人生の幸福を大きく左右するこの時代において、Giverであることは、最も確かな“人生への投資”なのかもしれません。

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