【老後破綻の現実】シニアの住宅ローンが人生を壊すとき。持ち家信仰の罠と、暮らしを守るために今できること

「家を買っても、安心できる時代じゃない」

「60歳を過ぎてもローンが残っているなんて思わなかった」
「家を建てたのに、老後に引っ越す羽目になるなんて…」

こうした声が、シニア世代から急増しています。
原因は、住宅ローンの高齢化・長期化です。

近年では、75歳完済や80歳以上でも借入可能な住宅ローン商品が増え、「老後の家を新築」「リフォームをローンで」も当たり前に。しかし、年金や限られた収入では、その返済が思うように進まず、破綻・手放し・生活困窮という負のスパイラルに陥る人が後を絶ちません。

ケース1:リフォームで老後資金が枯渇

Aさん(65歳・年金+パート月収)

築30年の自宅をバリアフリーにリフォーム。約600万円のローンを組んだが、返済額が月4万円。年金とパート収入を合わせても生活はギリギリ。急な病気や介護費で貯金を切り崩し、残高がゼロに。いまは自宅売却を検討しているが、地方のため買い手がつかず八方塞がりに。

ケース2:息子との同居をあてにして家を新築

Bさん(70歳・夫婦2人暮らし)

「将来は息子家族と住もう」と思い、2世帯住宅を新築。しかし、息子が転勤で同居は白紙に。広い家は冷暖房費もかさみ、固定資産税も高い。年金の8割がローン返済に消え、日々の食費すら削る生活に。老後は安心のはずが、今が一番不安だという。

なぜ、こうした「老後破綻」が起きてしまうのか?

背景1:住宅ローンの“完済年齢”が上がっている
• 昭和・平成初期:60歳前後で完済するのが一般的
• 現在:70代までローンが残る人が急増
→「老後=返済期」という逆転現象に

背景2:年金だけでは“持ち家維持”ができない
• 年金受給額は減少傾向
• 物価上昇・医療費・介護費などが増加
• 子どもの支援や孫への援助でさらに圧迫

背景3:「家が資産になる」は過去の話
• 地方の中古住宅は売ってもローンが残る
• 空き家化リスクも高まり、売却は困難に

“家を持つこと”がリスクになる時代

かつて、マイホームは「資産」であり「夢」でした。
しかし今では、それが人生後半の負債に転じることもあります。

特に高齢者世帯では、
• 収入の8割がローン返済に消える
• 家を売れず、相続も難しい
• 経済的DV(配偶者にローンを負担させる)
• 自宅を手放しても借金が残る

といった問題が表面化しています。

解決のカギ:情報と制度を正しく知る

① 「定年後ローン」のリスクを再確認
• 完済年齢を60〜65歳までに設定するのが理想
• 長期ローンを選ぶなら「退職後も返済可能か?」をシミュレーション

② 「住み替え」「賃貸」の選択肢も視野に
• 子どもの独立後に家が広すぎるなら売却+賃貸も現実的
• 固定費を下げ、老後資金を守る選択を

③ 「リバースモーゲージ」の活用
• 自宅を担保に融資を受け、死後に清算する仕組み
• 収入がない高齢者でも自宅に住み続けながら資金確保が可能
• 地方では対象物件が限られる/相続とのバランスは要注意

法的支援・セーフティネットも存在します

成年後見制度
• 判断能力が低下した高齢者の代わりに契約・資産管理をする制度
• 家の売却やローン交渉にも利用可能

生活保護との連携
• ローン破綻によって生活保護申請に至るケースも増加
• 住宅ローンがあっても一部申請可能な場合あり(自治体判断)

社会福祉協議会などの「緊急小口資金」
• 一時的な困窮時に数十万円の貸付が可能
• 利息なし・返済猶予など柔軟な条件

最後に:問い直すべきは「家」より「暮らし」

家は、あくまで“人生を支える器”であって、人生そのものではありません。
ローンを返すために老後が壊れるなら、それは本末転倒です。

あなたや、あなたの親、あるいはご近所の誰かが――
「まだ何とかなる」と思って、気づかぬうちに破綻の坂を転がっているかもしれない。

だからこそ、今のうちに考えてほしいのです。
• 収入に見合った住まい方か?
• 子どもに資産を残す必要は本当にあるか?
• 家に縛られず、自由な暮らしを選べるか?

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