沖縄にある“戦争の塔”

ひめゆりだけじゃない、もう一つの塔へ

沖縄戦を学ぶ場所として、まず名前が挙がるのは「ひめゆりの塔」。
しかし、沖縄には“もう一つの塔”が、いえ、数多くの“沈黙の塔”が存在します。

それらは観光ガイドに大きく取り上げられることは少ないものの、ひとつひとつが命の記憶と祈りの場所です。今回は、そんな沖縄の「戦争遺跡」としての“塔”を地図付きでご紹介します。


1. 白梅之塔(しらうめのとう)

女子学徒・白梅隊の祈りが宿る場所

白梅隊は、南風原陸軍病院に動員された女子学徒たち。
ひめゆりと同様に負傷兵の看護にあたるも、敗戦色の濃くなった中、逃げる場所もない壕の中で命を絶った人もいました。

  • 🚗 アクセス:那覇市中心部から車で約40分(南風原町)
  • 📝 備考:駐車場あり。静かな場所にあるため、訪問は午前中か日中推奨。

2. 梯梧の塔(でいごのとう)

美しい名に込められた悲しみ

沖縄県女子師範学校・第一高等女学校の生徒たちの慰霊塔。
「ひめゆり」とは別の学徒隊ですが、同様に壕での看護、自決という道を辿った記録が残ります。

  • 🚗 アクセス:那覇市街地から車で約30分(糸満市)
  • 📝 備考:周囲には他の慰霊碑も点在。まとめて巡ることも可能。

3. 健児の塔(けんじのとう)

男子学徒「鉄血勤皇隊」の記憶

10代の少年たちが“戦力”として戦場に送り出された。
「少年兵」という言葉を体現するような歴史の詰まった場所。軍国主義に翻弄された“未来ある命”を弔う塔です。

  • 🚗 アクセス:那覇市から車で40〜50分(糸満市摩文仁)
  • 📝 備考:平和祈念公園の近くに位置。徒歩で併せて見学可能。

4. 魂魄の塔(こんぱくのとう)

無名の命を、名もなきままに

収容しきれなかった戦没者、国籍不明の遺骨などを納めた慰霊塔。
沖縄県民だけでなく、朝鮮・台湾・日本兵・米兵など、敵味方問わず全ての死者の“魂魄”を弔う場です。

  • 🚗 アクセス:那覇市から車で約40分(糸満市)
  • 📝 備考:「宗教を超えた慰霊の場」として、地元住民の手で今も守られている。

5. 対馬丸記念館(つしままる きねんかん)

戦争は“後方”でも命を奪った

戦場になる前に疎開しようとした子どもたちが、米潜水艦によって乗っていた船ごと沈められた「対馬丸事件」。その記憶を伝える記念館です。

  • 🚶‍♂️ アクセス:那覇市・国際通り近く(徒歩圏内)
  • 📝 開館時間:10:00~17:00(火曜休館)/入館料:大人500円
  • 💡 学習資料や映像も充実。家族連れにもおすすめ。

おすすめモデルコース(半日〜1日)

🕘 午前:那覇市内(対馬丸記念館)
🚗 車で南下(約40分)
🕐 昼:健児の塔・魂魄の塔(平和祈念公園周辺)
🕒 午後:白梅之塔 or 梯梧の塔(糸満市~南風原)


最後に──塔に向き合う時間

どの塔にも共通するのは「静けさ」です。
パンフレットや音声ガイドもほとんどありません。
だからこそ、心で聴くことができます。

自分が立つその場所に、
かつて“生きていた誰か”がいたこと。

観光ではない旅を、あなた自身の中で
静かに始めてみてください。

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