教科書や書物には載っていない、
「小さな歴史」があると思う。
ある日突然、空襲で家族を失った人の沈黙。
防空壕の中で泣いていた子ども時代の記憶。
食べ物がなく、芋の皮を奪い合った日々。
それらは、戦況や外交、軍略とは無関係の、
「誰か一人の人生そのもの」だった。
だから今、僕は
戦争を「語る人」がまだ生きているこの時間に、
その声を拾っていくことに意味があると思っている。
なぜ“当時の世界状況とは関係なく”なのか
政治的に整理された歴史は必要だ。
でも、人の心の中にある体験は、
常に「文脈からこぼれ落ちる」。
家族を失った痛みや、
戦後の焼け跡を歩いた足の感覚は、
条約や統治体制の話では語りきれない。
僕が聞きたいのは、
「あのとき、あなたは何を見て、どう思ったか」。
世界がどうだったかより、
その人の世界がどうだったかに耳を傾けたい。
記録は、未来の誰かへの手紙になる
この活動は、過去を掘るためだけのものではない。
「戦争を知らない世代」が主流になる今だからこそ、
語られずに消えかけている記憶を、
次の世代に橋渡しする責任があると思う。
今を生きる私たちが、過去の声を受け取り、
静かに記録に残すことは、
未来への静かなメッセージになる。