ケネディ暗殺:CIAか、福音派か。そして真実はいつ語られるのか

はじめに

1963年11月22日、ダラスで起きたジョン・F・ケネディ大統領暗殺事件。
60年を経た今も、真相は完全には明らかになっていない。
なぜ、そしていつ事実が判明するのか。
ここでは、代表的な二つの説――CIA関与説と福音派動機説を、一次資料と現代の研究をもとに検証する。

CIA関与説

背景
• ピッグス湾事件(1961)でのCIA作戦失敗後、ケネディはCIA長官アレン・ダレスを解任。
• キューバ危機(1962)後も軍事的拡大を避け、CIAのタカ派と対立。

主要証拠・事実
• 暗殺犯とされるリー・ハーヴェイ・オズワルドが暗殺前にメキシコシティでソ連・キューバ大使館を訪問(CIA監視記録)。
• CIAが暗殺関連文書の一部を数十年非公開。
• 1979年の米下院暗殺調査特別委員会(HSCA)は「複数犯の可能性が高い」と結論。

評価
• 一部歴史家・ジャーナリストは「CIAの一部派閥による暗殺」説を支持(例:ジェームズ・ダグラス)。
• 主流学説では「直接関与の証拠はないが、情報不作為の可能性は高い」。

福音派動機説

背景
• ケネディは米国初のカトリック大統領。
• 当時の保守的福音派の一部は「ローマ法王の影響下になるのでは」と警戒(1960年ヒューストン演説で反論)。
• 宗教的な不信感は存在したが、政治暗殺の動機としての直接証拠はなし。

主な指摘
• 宗教対立は選挙戦で顕著だったが、暗殺時点では政治課題(冷戦・キューバ・ベトナム)の方が支配的。
• 暗殺事件との因果関係を裏付ける一次資料は未発見。

評価
• 宗教的背景は当時の空気として重要だが、動機の直接証拠はなく、歴史学的には周辺要因扱い。

事実はいつわかるのか
• 1992年「JFK暗殺記録収集法」により、全関連文書は2017年までに公開予定だった。
• トランプ政権(2017, 2021)、バイデン政権(2022)でも一部非公開が継続。
• 公開延期の理由は「国家安全保障上の懸念」とされるが、内容は不明。

米国に都合の悪い話なのか
可能性は3つに整理できる。
1. 諜報活動の手口や関係者名が現役で使われている(国家安全保障上の懸念)
2. 政府機関の失策や内部対立が露見する(国内信頼の失墜)
3. 外国との外交関係に悪影響を及ぼす情報が含まれる

特に1と2は、米政府が半世紀経っても一部情報を隠す理由として現実的。

結論
• CIA関与説は状況証拠と歴史的背景が比較的多いが、直接証拠なし。
• 福音派動機説は当時の宗教的空気を説明するが、暗殺との因果は薄い。
• 真実解明は、未公開文書が全面公開された時にしか可能にならないが、それが「完全に」行われる保証はない。

参考文献(抜粋)
• United States National Archives, “JFK Assassination Records Collection”
• The Warren Commission Report (1964)
• HSCA Final Report (1979)
• James W. Douglass, JFK and the Unspeakable (2008)

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