時代の波に乗った産業たち——1980年代バブルとその崩壊がもたらした光と影
1980年代、日本経済は空前の好景気に沸きました。いわゆる「バブル経済」の時代です。土地や株式の価格が異常なまでに上昇し、多くの企業や投資家が莫大な利益を手にしました。しかし、その繁栄は長くは続かず、1991年のバブル崩壊とともに日本経済は急速に冷え込みます。企業倒産や不良債権の問題が深刻化し、多くの業界が打撃を受けました。
一方で、この混乱の中から新たに台頭した産業も存在します。今回は、「バブル時代に好調だった業界」と「バブル崩壊後に成長を遂げた業界」を比較しながら、日本経済のダイナミズムを振り返ってみましょう。
バブル時代に好調だった業界
バブル期(主に1986〜1991年)に特に恩恵を受けたのは、以下のような業界でした。
■ 不動産業
土地神話が信じられていた時代。不動産価格は都市部を中心に高騰し、売買のたびに価格が上昇するという異常な状況が続きました。地上げや投機目的の取引が活発化し、地価上昇は日本中に波及しました。
■ 株式市場
日経平均株価は1989年末に史上最高値の38,915円を記録。多くの個人投資家や企業が株取引に参入し、金融業界は活況を呈していました。
■ 建設業
再開発や高層ビル建設、リゾート開発など、大規模なプロジェクトが相次ぎ、建設業界は大きく潤いました。公共・民間ともに巨額の資金が投じられていました。
バブル崩壊後に好調となった業界
バブル崩壊後は、長期的な経済停滞(いわゆる「失われた10年」)に突入しますが、その中でも次のような業界が新たな成長の波に乗りました。
■ IT・テクノロジー業界
1990年代後半から2000年代にかけて、インターネットの普及が進み、IT業界が急成長。ソフトウェア開発、ウェブサービス、通信インフラなどを手がける企業が次々と登場し、経済のデジタル化を牽引しました。
■ 住宅・不動産再建築業
一時は冷え込んだ不動産業界も、再開発や中古住宅リノベーション、マンション建て替えといった新たなニーズに対応する形で徐々に回復。特に都市部では再開発による資産価値の再評価が進みました。
■ グリーンエネルギー・環境関連業界
環境意識の高まりを背景に、太陽光や風力といった再生可能エネルギーが注目されました。2000年代以降は、環境技術やエコビジネスに取り組む企業が台頭し、政府の支援政策とも相まって成長を続けています。
■ 医療・健康ケア業界
少子高齢化が進む日本において、医療・介護・健康関連産業は今や基幹産業のひとつ。介護施設、訪問医療、健康食品、フィットネス産業などが拡大し、安定した市場を形成しています。
おわりに 〜産業の浮沈は「時代」と共にある〜
バブル時代には、不動産・株式・建設といった資産バブルに連動した業界が繁栄しました。しかし、バブルが崩壊し、経済や社会の構造が変化するなかで、IT、医療、環境といった“未来志向”の産業が成長を遂げました。
経済の潮流は常に変化しています。だからこそ、どんな時代にも柔軟に適応できる視点と準備が、今を生きる私たちにも求められているのかもしれません。