今では誰もが日常的に口にする「やばい」。
「やばっ!財布忘れた…」のようにピンチを表すときもあれば、
「このケーキ、やばいくらい美味しい!」と感動を表すときにも使われます。
同じ言葉なのに、なぜ正反対の意味を持つようになったのでしょうか。
もともとは「危険」「具合が悪い」が原点
「やばい」は、江戸時代の博徒(ばくち打ち)たちが使っていた隠語がルーツといわれます。
当時は“身に危険が迫っている”“まずい状況だ”という否定的な意味だけ。
その後も長く、「あの場所はやばい」「今日は体調がやばい」のように“危険・不調”を表す言葉として使われてきました。
なぜ良い意味にまで広がったのか?
きっかけになったのは 「強調表現」としての使い方 です。
若者言葉には、ネガティブな語をポジティブに“反転”させる流れがときどき生まれます。
「むしろ良い意味で使ったら面白い・カッコいい」という感覚が広まり、
- 「やばい美味しさ」
- 「やばい楽しさ」
- 「やばい人(=すごい人)」
など、“すごく〜だ”という強調のニュアンス を担うようになります。
特に2000年代以降、テレビ・SNS・音楽などを通して若者語が一気に拡散。
結果として、「やばい」は肯定・否定どちらにも使える万能語になりました。
言葉は時代とともに変わる
本来の意味とは異なる使い方が広まるのは、決して珍しいことではありません。
言葉は社会の動きや若者文化の影響を受けて、意味が広がったり変化したりするものです。
「やばい」はその代表例。
もともとの意味(危険) と、
現代的な意味(すごい) の両方が共存しているからこそ、
会話の文脈から読み取る力も求められる、実は奥が深い言葉でもあります。
おわりに
「やばい」という一言には、時代の変化や言葉の柔らかさが詰まっています。
何気なく使っている言葉でも、その背景を知るとちょっと見え方が変わるはず。
次に「やばい!」と言うとき、少しだけこの歴史を思い出してみてください。