──3.14の裏にある歴史
学校で当たり前のように使う「π(パイ)=3.14」。
けれど、なぜこの数字になったのかと聞かれると、意外と説明できないものです。
実は π は「円の直径と円周の比」という、ごくシンプルな定義から生まれた数字。
ところが、この比はどんな円でも同じという事実こそが、人類の長い歴史の中で発見されてきた大きなポイントなのです。
古代文明の近似値は“ざっくり”から始まった
最初に π が現れるのは約4000年前の古代文明。
古代エジプト:およそ 3.16
古代バビロニア:およそ 3.125
測定道具も限られていた時代にしては、かなり近い値を出しています。
建築や天文学のため、円の正確な長さを知る必要があったことが背景にあります。
アルキメデスが“史上初の本格的な計算”を行う
円周率の計算を初めて数学的に行った人物は、古代ギリシャの数学者 アルキメデス(紀元前3世紀)。
彼は円に内接・外接する正多角形をどんどん増やしていき、
多角形の周の長さが円周に近づく原理を利用して π を挟み撃ちにしました。
その結果、
3.1408… < π < 3.1428…
という驚異的な精度に到達。
「3.14」の由来は、すでにこの時代にほぼ出そろっていたのです。
時代が進むほど、桁数は加速度的に増えていく
中世から近代にかけても、数学者たちは π の桁を競うように拡張しました。
中国の劉徽:3.14159 に近い値
日本の関孝和(江戸時代):小数点以下 41 桁を計算
19世紀には欧米の数学者がさらに桁数を更新
計算方法は進化し、「より正確な円の長さ」が人類の知の象徴のように扱われました。
現代はスーパーコンピュータの出番
今では π の計算はコンピュータの精度を測るための腕試しのような存在。
2020年代には100兆桁以上が計算済み。
もはや日常生活では全く使わないレベルの桁数に達しています。
結局、なぜ π は「3.14」に見えるのか?
π は終わりのない「無理数」。
つまり、小数点の先にずっと続く、規則性のない数です。
ただし、日常生活や学校の計算では
小数点以下2桁の「3.14」で十分使えるほど精度として問題がないため、
教育現場では慣例的にこの値が採用されています。
おわりに
円周率は単なる「3.14」ではなく、
人類が何千年もかけて追いかけてきた数学のロマンそのもの。
古代の職人から現代のエンジニアまで、
円を極めたいという好奇心が、今の桁数を生み出しています。
今度「π=3.14」と書くとき、
その裏に広がる長い歴史をふと思い出してみてください。