人は「知らないこと」に恐怖を抱く
1989年に公開された映画『大霊界』。
俳優・丹波哲郎さんが製作・監督・主演を務めた作品で、「死後の世界」をテーマにした映画として大きな話題になりました。
映画の内容については、霊界の存在を描いたフィクションであり、その世界観は丹波哲郎さん自身の思想や信念が色濃く反映された作品です。死後の世界の描写を事実として裏付ける科学的証拠があるわけではありません。
しかし、この映画を見ていて改めて考えたことがあります。
人は、知らないことに恐怖を抱く。
これは死後の世界だけではありません。
子どもが初めて学校へ行く日。
新しいクラス。
初めての受験。
初めての就職。
誰でも経験したことがないことには、不安を感じます。
心理学では、不確実な状況に対して不安や恐怖を感じやすいことが知られています。未知のものは予測できないため、人間は本能的に警戒するのです。
だからこそ、教育には大きな役割があります。
「知らない」を「知っている」に変えること。
これだけで、人は驚くほど安心できます。
例えば数学。
最初は方程式を見ただけで嫌になる子もいます。
しかし、解き方を一つひとつ理解すると、「難しい」から「できそう」に変わります。
英語も同じです。
アルファベットしか読めなかった子が、単語を覚え、文章が読めるようになる。
その瞬間、英語への恐怖は少しずつ消えていきます。
つまり、勉強とは知識を増やすことだけではありません。
未知への恐怖を減らす営みでもあるのです。
これは社会に出ても変わりません。
AI、国際情勢、投資、防災、歴史。
知らないままだと、不安だけが大きくなります。
しかし、正しい知識を得ることで、冷静に判断できるようになります。
だから私は、生徒たちに「勉強しなさい」と言うのではなく、「知ることで怖くなくなる」と伝えたいと思っています。
『大霊界』は死後の世界をテーマにした映画ですが、私にとって印象に残ったのは、「人は未知のものを恐れる」ということでした。
そして教育とは、その未知を少しずつ既知へと変えていく仕事です。
知識は点数を上げるためだけにあるのではありません。
人生の不安を減らし、物事を正しく判断する力を育てるためにある。
子どもたちには、恐怖から逃げるのではなく、学ぶことで恐怖を乗り越えられる人になってほしいと願っています。