「子どもが言うことを聞かない。」
「勉強しなさいと言ってもやらない。」
教育に携わる人なら、一度はそんな悩みを抱えたことがあるでしょう。
しかし、その答えを80年以上も前に語っていた人物がいます。
旧日本海軍の連合艦隊司令長官、山本五十六です。
彼の最も有名な言葉があります。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」
さらに続きがあります。
「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。」
そして最後は、
「やっている姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」
と言われています。
なお、この長い三部構成の文章は広く山本五十六の言葉として知られていますが、研究者の間では後半部分については後世に付け加えられた可能性が指摘されています。一方、最初の
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」
は、山本五十六の言葉として広く史料に残されています。
「勉強しなさい」だけでは子どもは動かない
教育現場では、
「宿題をやりなさい。」
「スマホばかり見ていないで勉強しなさい。」
という言葉が毎日のように飛び交います。
しかし、言葉だけで子どもは変わるでしょうか。
山本五十六は、
まず自分がやって見せる。
次に説明する。
その後、本人に挑戦させる。
できたら認める。
という順番が大切だと考えていました。
これは現代の教育学とも一致しています。
教師が解き方を示し、生徒が実際に解き、できたことを具体的に褒める。
この流れは、多くの教育現場で実践されている効果的な指導法です。
「褒める」は甘やかすことではない
「褒めすぎはよくない。」
そんな声を耳にすることもあります。
確かに、何でも褒めればいいわけではありません。
山本五十六が言いたかったのは、
努力や成長を認めることです。
テストで30点だった子が40点になった。
昨日までできなかった計算が今日はできた。
英単語を毎日10個覚え続けた。
こうした小さな成長を認めることが、次の努力につながります。
教育は命令ではなく信頼で成り立つ
教育とは、人を思い通りに動かす技術ではありません。
一人ひとりの可能性を信じ、その力を引き出す営みです。
だからこそ、
命令するより示す。
叱るより教える。
管理するより任せる。
この姿勢が、子どもの主体性を育てます。
最後に
山本五十六は、激動の時代を生きた軍人でした。その歴史的評価は、戦争指導者として多面的に考える必要があります。しかし、彼が人材育成について語った言葉は、時代を超えて教育や組織運営の現場で引用され続けています。
家庭でも学校でも塾でも、子どもたちは大人の背中を見ています。
「勉強しなさい」と言う前に、大人自身が学ぶ姿を見せているか。
「努力しなさい」と言う前に、自分は努力しているか。
教育とは、知識を教えることだけではありません。
人は言葉ではなく、生き方から学ぶ。
山本五十六の言葉は、その本質を今も私たちに問いかけているように思います。
参考文献
- 山本五十六
- 防衛省防衛研究所(山本五十六に関する史料・研究)
- Albert Bandura, Social Learning Theory(1977)