第5回「親の成功体験が子どもを苦しめる時」

『自分の時代』を押しつけない教育

親が子どもに望むことの中には、自分自身の経験が大きく影響しています。

「自分は努力して乗り越えてきた」
「苦労したから今がある」
「同じように頑張れば、きっと子どもも成功できる」

そう考える親は少なくありません。

そして、その経験を子どもに伝えること自体は、決して悪いことではありません。

努力する大切さ。
継続する力。
困難から逃げない姿勢。

親の経験から学べることはたくさんあります。

しかし、問題になるのは「自分の成功体験が唯一の正解」になってしまった時です。

例えば、

「自分は毎日3時間勉強した」
「部活で厳しい練習を耐え抜いた」
「この方法で成功したのだから、あなたも同じようにやればいい」

という考えです。

しかし、時代は大きく変化しています。

親が子どもだった頃と現在では、社会環境も、学校教育も、求められる能力も違います。

昔は「正解を覚える力」が重視される場面が多くありました。

しかし現在は、情報を集め、自分で考え、変化に対応する力がより求められる時代になっています。

また、同じ家庭で育った兄弟であっても、性格や得意分野は違います。

一人は競争の中で力を発揮するかもしれません。

もう一人は、自分のペースでじっくり取り組むことで才能を伸ばすかもしれません。

大切なのは、親の成功した方法をそのまま子どもに当てはめることではなく、その子に合った方法を一緒に探すことです。

教育虐待につながるケースでは、親が無意識のうちに、

「自分が正しい」
「自分の経験を否定されたくない」

という気持ちに縛られてしまうことがあります。

しかし、子どもは親の人生の続きを生きる存在ではありません。

子どもには、子ども自身の時代があります。

親が歩んできた道を参考にすることはできます。

でも、その道を無理やり歩かせることは、子どもの可能性を狭めてしまうかもしれません。

親にできる最高の教育は、自分の答えを渡すことではなく、子どもが自分自身の答えを見つけられるように支えることです。

「自分の時代はこうだった」

ではなく、

「今、この子に必要なものは何だろう」

と考えること。

それが、これからの時代の親に求められる姿勢なのではないでしょうか。

子育てとは、過去の成功を再現することではありません。

未来を生きる一人の人間を、一緒に育てていくことです。

次回は、
第6回「褒める教育と叱る教育。子どもの自己肯定感を守るために」
について考えていきます。

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