「先生に褒められたい。」
「親に認められたい。」
「友達から嫌われたくない。」
子どもは誰でも、周りの人から認められたいと思うものです。それ自体は自然な感情です。
しかし、もし「安心」が他人の評価だけで決まるようになると、その安心はとても不安定なものになります。
褒められれば安心し、叱られれば自信を失う。
テストで良い点を取れば嬉しいけれど、悪い点を取れば「自分には価値がない」と思ってしまう。
このような状態では、自分の心が常に他人の評価に左右されてしまいます。
本当の安心とは何か
教育の目的は、子どもを「評価される人」に育てることではありません。
自分で自分を支えられる人に育てることです。
「今回は失敗した。でも次は工夫してみよう。」
「思うような結果ではなかった。でも努力したことには意味がある。」
そんなふうに、自分自身を認め、立て直せる力があれば、周囲の評価に振り回されにくくなります。
これは「自己肯定感」というよりも、自己効力感に近いものです。
自己効力感とは、「自分は努力や工夫によって課題を乗り越えられる」という感覚です。心理学者アルバート・バンデューラが提唱した概念で、多くの研究でも学習意欲や挑戦する姿勢との関連が示されています。
親や教師にできること
大人は、結果ばかりを評価しがちです。
「100点を取ってすごいね。」
「一番になってえらいね。」
もちろん嬉しい言葉ですが、それだけでは子どもは「結果が出なければ認めてもらえない」と考えてしまうことがあります。
だからこそ、
「最後までやり切ったね。」
「前より字が丁寧になったね。」
「よく考えて取り組めたね。」
というように、努力や過程に目を向けた言葉をかけることが大切です。
そうした積み重ねが、「自分は挑戦できる」という感覚を育てます。
AI時代だからこそ必要な力
AIは答えを教えてくれます。
しかし、「失敗しても立ち上がる力」や「自分を信じる力」は教えてくれません。
社会に出れば、誰からも褒められない日もあります。
思いどおりにいかないこともあります。
そんなとき、自分を支えてくれるのは、他人の評価ではなく、「自分ならもう一度やってみよう」という内側からの安心感です。
おわりに
他人から認められることは大切です。
しかし、それだけを安心の土台にしてしまうと、その安心は他人次第になってしまいます。
教育が目指すべきなのは、子どもが「誰かに認められるから頑張る」のではなく、「自分で決めたことを、自分でやり抜ける」人へ成長することです。
他人の評価は変わります。
けれど、自分を信じて努力を続ける力は、一生の財産になります。
参考
- アルバート・バンデューラ『Self-Efficacy: The Exercise of Control』(1997)
- 文部科学省「生きる力」の理念(知・徳・体のバランスのとれた育成)