『自分の時代』を押しつけない教育
親が子どもに望むことの中には、自分自身の経験が大きく影響しています。
「自分は努力して乗り越えてきた」
「苦労したから今がある」
「同じように頑張れば、きっと子どもも成功できる」
そう考える親は少なくありません。
そして、その経験を子どもに伝えること自体は、決して悪いことではありません。
努力する大切さ。
継続する力。
困難から逃げない姿勢。
親の経験から学べることはたくさんあります。
しかし、問題になるのは「自分の成功体験が唯一の正解」になってしまった時です。
例えば、
「自分は毎日3時間勉強した」
「部活で厳しい練習を耐え抜いた」
「この方法で成功したのだから、あなたも同じようにやればいい」
という考えです。
しかし、時代は大きく変化しています。
親が子どもだった頃と現在では、社会環境も、学校教育も、求められる能力も違います。
昔は「正解を覚える力」が重視される場面が多くありました。
しかし現在は、情報を集め、自分で考え、変化に対応する力がより求められる時代になっています。
また、同じ家庭で育った兄弟であっても、性格や得意分野は違います。
一人は競争の中で力を発揮するかもしれません。
もう一人は、自分のペースでじっくり取り組むことで才能を伸ばすかもしれません。
大切なのは、親の成功した方法をそのまま子どもに当てはめることではなく、その子に合った方法を一緒に探すことです。
教育虐待につながるケースでは、親が無意識のうちに、
「自分が正しい」
「自分の経験を否定されたくない」
という気持ちに縛られてしまうことがあります。
しかし、子どもは親の人生の続きを生きる存在ではありません。
子どもには、子ども自身の時代があります。
親が歩んできた道を参考にすることはできます。
でも、その道を無理やり歩かせることは、子どもの可能性を狭めてしまうかもしれません。
親にできる最高の教育は、自分の答えを渡すことではなく、子どもが自分自身の答えを見つけられるように支えることです。
「自分の時代はこうだった」
ではなく、
「今、この子に必要なものは何だろう」
と考えること。
それが、これからの時代の親に求められる姿勢なのではないでしょうか。
子育てとは、過去の成功を再現することではありません。
未来を生きる一人の人間を、一緒に育てていくことです。
次回は、
第6回「褒める教育と叱る教育。子どもの自己肯定感を守るために」
について考えていきます。