~AI時代だからこそ、「読む力」と「考える力」が人生を左右する~
「本なんて読まなくても、AIに聞けば答えが出る。」
そんな時代になりました。
分からないことがあれば、スマートフォンで検索し、AIに質問すれば数秒で答えが返ってきます。
便利になったことは間違いありません。
しかし、だからこそ私は子どもたちに伝えたいことがあります。
「AIは答えをくれますが、人生の判断まではしてくれません。」
その判断を支えるのが、教養です。
今回は、「読書」と「AI時代」という二つの視点から、教養について考えてみます。
ケース⑤ 本を読まない高校生Iさん
17歳のIさん。
スマートフォンは毎日4~5時間使っています。
ショート動画を見たり、SNSを眺めたりしているうちに、一日が終わります。
一方で、本を読む習慣はありません。
学校の課題以外で読書をしたことはほとんどありません。
大学受験の面接で、こんな質問を受けました。
「最近読んだ本はありますか?」
「尊敬する人物はいますか?」
「あなたの長所を教えてください。」
Iさんは困ってしまいました。
「特にありません。」
「思いつきません。」
「別に……。」
悪い子ではありません。
ただ、自分の考えを言葉で表現する経験が少なかったのです。
教養を身につけたJさん
同じ17歳のJさん。
読書家というわけではありません。
それでも月に一冊は本を読みます。
歴史に興味があり、伝記や小説も好きです。
面接で同じ質問をされました。
「最近読んだ本はありますか?」
「『学問のすすめ』を読みました。特に『人は生まれながらにして貴賤はない』という考えが印象に残りました。」
「そこから何を学びましたか?」
「努力によって人生を切り開くことの大切さです。」
面接官は、その内容だけで評価したわけではありません。
「自分の考えを、自分の言葉で話せる人だ。」
そう感じたのです。
読書は語彙力だけではない
読書をすると語彙が増えます。
しかし、それだけではありません。
主人公の気持ちを考える。
作者の意図を考える。
時代背景を知る。
「もし自分だったらどうするか。」
そんな想像力が育ちます。
この積み重ねが、人との会話や仕事、子育てにもつながっていくのです。
AI時代だからこそ教養が必要
「AIが全部やってくれるなら、勉強しなくてもいい。」
そう考える人もいます。
しかし、本当にそうでしょうか。
例えばAIに、
「投資を始めたい。」
と聞けば、答えは返ってきます。
「志望校を教えて。」
と聞けば、情報は出てきます。
「病気について知りたい。」
と聞けば、説明もしてくれます。
でも、その情報を採用するかどうかを決めるのは人間です。
AIは情報を整理できます。
しかし、
「何を信じるべきか。」
「どの価値観を選ぶか。」
「何を大切に生きるか。」
までは決められません。
そこに必要なのが教養です。
AIは「答え」を出す。教養は「問い」を生み出す。
AIが得意なのは答えることです。
一方、人間にしかできないことがあります。
それは、
「何を質問するか。」
を考えることです。
歴史を知っている人は、
「なぜ戦争は繰り返されるのか。」
と考えます。
経済を知っている人は、
「この政策にはどんな副作用があるのだろう。」
と考えます。
文学を読んでいる人は、
「この人はなぜこんな行動を取ったのか。」
と考えます。
良い問いを立てられる人ほど、AIも有効に活用できます。
逆に、教養がなければAIから返ってきた答えを、そのまま信じてしまう危険があります。
教養は一生使える財産
学校で学ぶことの多くは、
「テストが終われば忘れる。」
と言われます。
しかし、実際には忘れていません。
歴史を学んだから背景を考える習慣が身につく。
数学を学んだから数字を疑える。
国語を学んだから文章を正しく読める。
理科を学んだから根拠を探すようになる。
知識そのものではなく、「考え方」が残るのです。
それこそが教養です。
おわりに
私は塾で英語や数学を教えています。
もちろん、定期テストや高校受験は大切です。
しかし、それ以上に大切なのは、
「自分で考えられる人」を育てること。
AIはますます進化するでしょう。
便利な時代になることは間違いありません。
だからこそ、便利さに使われる人ではなく、便利さを使いこなせる人になってほしい。
その違いを生むのが教養です。
読書をすること。
歴史を学ぶこと。
ニュースを考えながら見ること。
家族で社会について話すこと。
その一つ一つが、子どもたちの未来を支える力になります。
次回はいよいよ最終回です。
「知は力なり」という言葉を残したフランシス・ベーコンや、福沢諭吉、孔子などの考えも交えながら、「なぜ教育は教養を育てる営みなのか」をまとめたいと思います。