「この子は勉強が苦手だから…」
「何をやっても続かない。」
子どもに対して、このような言葉を口にしたことはないでしょうか。
もちろん、生まれ持った特性や家庭環境など、一人ひとり異なる条件があります。そのため、言葉や環境だけですべてが解決するわけではありません。しかし、多くの教育学や心理学の研究は、子どもの成長が周囲の言葉や環境から大きな影響を受けることを示しています。
子どもは「言われた自分」になりやすい
子どもは、自分自身を評価する基準をまだ十分に持っていません。
だからこそ、親や先生、塾の先生など、身近な大人から繰り返し言われる言葉を、自分自身の姿として受け止めていきます。
「努力家だね。」
「前よりできるようになったね。」
「失敗しても挑戦したことが素晴らしいよ。」
このような言葉は、「自分は頑張れる人間なんだ」という自己認識につながります。
一方で、
「どうせ無理。」
「また失敗したの?」
「勉強ができない子だから。」
という言葉を繰り返されると、「自分にはできない」という思い込みが強くなり、挑戦する意欲まで失ってしまうことがあります。
環境は子どもの行動を変える
同じ子どもでも、環境が変わると行動が変わることがあります。
例えば、
- 分からないことを安心して質問できる。
- 小さな努力でも認めてもらえる。
- 集中して勉強できる場所がある。
- 「昨日の自分」と比べて成長を評価してもらえる。
このような環境では、子どもは失敗を恐れず挑戦しやすくなります。
反対に、否定ばかりされる環境や、何をしても認められない環境では、本来持っている力を十分に発揮できないこともあります。
教育とは「可能性を信じること」
教育は、テストの点数だけを上げることではありません。
子どもが「自分にもできるかもしれない」と思えるようになることも、教育の大切な役割です。
私が塾で子どもたちを見ていて感じるのは、成績が伸びる子の多くは、特別な才能を持っているわけではないということです。
自分を信じられるようになった子。
努力を認めてもらえた子。
安心して失敗できる環境に出会えた子。
そうした子どもたちは、少しずつ自信を積み重ね、結果として学力も伸びていきます。
私たち大人にできること
子どもは未完成だからこそ、伸びる可能性を持っています。
だからこそ、大人は「できない理由」を探すのではなく、「どうすればできるようになるか」を一緒に考える存在でありたいものです。
何気ない一言が、子どもの未来を支えることもあれば、可能性を閉ざしてしまうこともあります。
今日からぜひ、「できない」ではなく「まだできない」、「ダメだね」ではなく「次はどうすればうまくいくかな」という言葉を意識してみてください。
子どもは、言葉と環境によって育ちます。
だからこそ、私たち大人が子どもに与える言葉と環境を大切にすることが、未来を育てる第一歩なのです。
参考文献・研究
- Albert Bandura『Self-Efficacy: The Exercise of Control』(1997)
- Carol Dweck『Mindset: The New Psychology of Success』(2006)
- OECD「社会情動的スキル(Social and Emotional Skills)」に関する報告
- 文部科学省「生徒指導提要」(令和4年改訂)